めぐるの最新情報(ニュース)
先日、D&DEPARTMENTさんと猪苗代漆林計画が共催し、“縄文から続く漆と食”をテーマとした特別なツアーを開催しました。
今年の会津は、豪雪の影響もあり、冬らしい日がずっと続いてきた印象ですが、この日の会津は久しぶりにあたたかな気候。春の訪れを感じさせる3月のはじまりの日の開催となりました。
満員御礼となったこのツアー。朝イチの新幹線に乗ってお集まりいただいた皆さんと共に最初に訪れたのは、猪苗代漆林計画(いなわしろうるしりんけいかく)メンバーでもある塗師&漆掻き職人の平井岳さんの工房です。
山中にある平井さんの工房は、まだこんなに雪が積もっています。

冬ですが、特別に少しだけ「漆掻き(うるしかき)」の実演も。伐採した木を運んできて、漆の液を採る様子を解説しました。


続いて、漆の液そのものの解説も。採ってからすぐには使えず、1年ほど熟成させるお話は、まさに「漆は生き物」ということを感じて、皆さん興味津々だったようです。


その後、簡易的なギャラリーも見ていただき、皆さん、平井さんの器に惹き込まれていました。納得いく仕上がりにならず、何度も塗り重ねて出来上がった器を、愛おしそうにお迎えされる方もいらっしゃいました。


続いては、猪苗代町内の長照寺さんに移動。
そう、ここでは、特別なお食事の時間となりました。
禅の教えの中に流れる“食”への向き合い方を学びながら、縄文的な食事を漆器で楽しんでいただきます。
まずは、長照寺の楠和尚さまのお話をお聞きしました

禅宗の修行で使われる「応量器(おうりょうき)」という入れ子の椀のお話を、その作法や修行での扱い方、それぞれの器の意味をお聞きしました。そう、「めぐる」もこの応量器に範を取っているのですが、まさにその原点となるお話でした。

さらに「五観の偈(ごかんのげ)」という禅宗の食事の際に必ず唱えられる言葉の意味をひとつひとつとても分かりやすい解説いただきました。

和尚様から最後の締めの言葉として、「“精進料理”の意味とは、作る人も食べる人も修行であるという心構えがあるということだ。植物も動物も命は平等である」というお話しをいただき、その後の実際の食事の意味や意義が何倍にも深くなったように思います。個人的にも深く感じ入りながら聞かせていただきました。

そして、いよいよお食事の時間。
奥会津・三島町で「ソコカシコ」というゲストハウスを営む、料理家&アーティストの三澤真也さんにお願いして、会津の冬の知恵である保存食などをベースに、“縄文精進料理”をテーマにしたこの日だけの特別メニューを作っていただきました。



【縄文精進料理 お品書き】
○「栃の実もち粟粥」 器:「めぐる」の三椀(大)
(使用食材:もち粟、栃の実、藻塩、水)
○「縄文スープ」 器:「めぐる」の三椀(中)
(使用食材:乾燥椎茸、乾燥舞茸、カノシタ(天然きのこ)、天然なめこ、川海老(猪苗代湖産)、里芋、芹、三つ葉、水)
○「土屋さんの育てたお米「ゆうだい」の塩むすび」 器:こづゆ椀
(使用食材:お米、大葉、藻塩、水)
※お米は基本的に縄文食材ではありませんが、猪苗代漆林計画メンバーである土屋さんのお米を使用。
○「川海老、里芋、とっくり芋のがんもどき」 器:平井岳さん作「漆の平皿」
(使用食材:川海老(猪苗代湖産)、里芋、とっくり芋(猪苗代湖産の山芋)、胡桃、藻塩、葛粉、胡麻油)
○「平井さんの釣ったワカサギの一夜干しと燻製」 器:平井岳さん作「漆の平皿」
(使用食材:ワカサギ(桧原湖、小野川湖産)、塩、胡麻油、燻製チップ、水)
○「熊肉ベーコン」 器:平井岳さん作「漆の平皿」
(使用食材:熊肉、塩、山椒、蜂蜜、水、燻製チップ)
○「鹿肉ジャーキー」 器:平井岳さん作「漆の平皿」
(使用食材:鹿肉、塩、山椒、蜂蜜、水、燻製チップ)
○「塩漬け山菜の油炒め」 器:平井岳さん作「漆の平皿」
(使用食材:塩漬けワラビ、塩漬け山ウド、塩漬けカノシタ(天然きのこ)、胡麻油、藻塩)
○「木耳の胡桃和え」 器:平井岳さん作「漆の平皿」
(使用食材:乾燥木耳、胡桃、栃の蜂蜜、藻塩、水)
○「いろいろお豆と栃蜂蜜のきな粉ボール」 器:「めぐる」の三椀(小)
(使用食材:小豆、黒豆、金時豆、胡桃、山椒、きな粉、栃の蜂蜜、藻塩、水)
○「漆の葉のお茶」 器:湯呑み茶碗
(使用食材:乾燥させた漆の葉、水)



そして、最後のプログラムは、漆掻き職人・平井さんが採った漆を使って、拭き漆でのお箸づくりも体験していただきました。
ご自身の手に合わせて箸の長さを調整し、木地に漆を染み込ませる第一段階の「木地固め」の作業を実際に行います。

猪苗代漆林計画のツアーでは定番となっているこの体験ですが、今回は少し特別バージョン。“縄文”に触れる漆の工程をということで、縄文時代にも赤い漆を作る材料として使われていた「ベンガラ」を用いて、色漆を作るところからしていただきました。


ひたすら漆を練り練りする作業ですが、漆の強い粘性を感じられて、これがなかなか楽しい作業なんです。

今回の主催であるD&DEPARTMENTの黒江さんもハマっていたようです(笑)

こちらは黒い漆で塗ったお箸。皆さん上手に塗り上げられたようです。
今回のお箸はこれから先の工程は平井さんが仕上げて、数カ月後に皆さまのお手元に届く予定ですので、どうぞお楽しみに!

ということで、半日かけて冬の猪苗代を舞台に、“縄文”を手がかりに漆のあれこれを駆け抜けたツアー、無事に終了することができました。ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました!
今回の経験を活かし、今後も漆に触れていただくツアーやイベントを開催していきたいと思いますので、どうぞお楽しみに!
