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水平の木地の仕上げ挽き | 第6期とつきとおか日記③

2020年6月23日とつきとおか日記 


会津の漆畑がウルシの花のいい香りに包まれた6月上旬、めぐる「水平」の木地が出来上がりました。

今日はその最後の工程、「仕上げ挽き」を皆さんにご紹介したいと思います。

まずは、半年以上かけてじっくり寝かせてきた荒型を、仕上げ挽きにかかる数週間前に、下の写真のようにさらに器のかたちに近づけます。

木のかたまりから一気に仕上げるのではなく、こうして、いくつかの段階を経ながら徐々に器のかたちに近づけていくことで、手仕事であっても均一な正確なかたちに保つことが出来ると共に、その都度、木がわずかな伸縮を繰り返すことで、長く使っていても狂いの少ない木地となります。

そうして、いよいよ「仕上げ挽き」に入ります。
水平の木地を担当していただいてるのは、丸祐製作所の2代目、荒井勝祐(かつひろ)さんです。

荒井さんは、シャープなラインの表現が可能で、木の歪みの少ない「縦木取り(たてきどり)」でのロクロ挽きを専門とする木地師さんです。めぐる「水平」の繊細な形状には、30年以上に渡り手挽き一筋でお仕事をされてきた荒井さんの技が存分に活かされています。

水平は、器の腰に角があり、立ち上がりは繊細なS字のカーブを描く、通常よりも手間のかかる形状なのですが、手挽きで寸分違わず同じかたちに仕上げていく荒井さんの技術はいつ見ても感動します。

木地師さんが使う「カンナ」もそれぞれの職人さんの自作です。金属を鍛造して作ります。「道具を自分で作るのも仕事のうち。鍛冶仕事が出来ないと木地屋は出来ない」と木地師さんたちはよく話します。

そして、カンナで削ったらおしまいではなく、最後に何種類かのサンドペーパーで丹念に磨いていきます。この妥協なき丁寧さが、最終的に漆器の塗膜の美しさに大きく関わってきます。

そうして出来上がった荒井さんの木地は、少し光を反射するくらい艶々滑らかな肌です。

ここまでが器の「外側」の仕上げ工程。

内側の仕上げは、また数日後に行われます。

内側も外側と同じ様に轆轤(ろくろ)にセットして挽いていきます。特に口縁部分は、口当たりや飲み口の心地良さを決める部分。
漆が塗り重ねられた後の厚みも想定しながら、薄過ぎず厚過ぎず。そして立ち上がりの羽反部分も絶妙なカーブに仕上げていきます。

最後は同じようにサンドペーパーで丁寧に仕上げされます。

こうして、出来上がった「水平」の木地(右が大椀の完成品です)。
色白のふっくら柔らかいトチノキの肌を見ると、「まるで器の赤ちゃんだなぁ〜」といつも愛おしく思います。

こうして出来上がった木地は、早速、塗師・吉田徹さんの工房へと運ばれました。


ここまでご紹介してきた荒井さんの製作の様子がより詳しく分かる動画もご用意しました。6分程のダイジェストにまとめましたので、是非ご覧いただけたら幸いです。


さて、皆さん、上の動画をご覧いただいて、荒井さんの所作からなにかお気づきになられたでしょうか?





それは、仕上がりの最終確認は、目ではなく、必ず「手」だということ。

上の写真を見ていただくと分かると思うのですが、荒井さんは器の方を見ていないんです。目で見ずに手に伝わる感触だけで、仕上がり具合を最終的に判断しています。(それだけでなく、挽いている間も、木地にワレやヒビなどの不具合がないかの確認も、目ではなく「耳」で感じています。)

実は、この所作、「めぐる」の開発パートナーであるダイアログ・イン・ザ・ダークのアテンドの皆さん(視覚に頼らずに生きている方たち)の「ものを見る」感覚ととても通じるところがあります。

「めぐる」の商品開発では、職人さんたちとアテンドの皆さんは、初対面から不思議と意気投合し、多くを語り過ぎなくても通じ合いながら進めていくことが出来たのですが、それは、日頃から「手で見る」という感覚を研ぎ澄ませてきた、隠された共通のベースがあったからだったのかもしれません。

そして、そんな両者だったからこそ、お互いに見えない力が引き出され、美しい器が出来上がったのだと、作り手さんたちの所作を見ていると今でも時々思うことがあります。

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